11月6日に実施された米国大統領選挙ではオバマ大統領が再選

 11月6日に実施された米国大統領選挙ではオバマ大統領が再選された選挙直前まで、オバマ大統領とロムニー元知事の支持率の差が1ポイントあるかないか、という大接戦であったこともあり、「一般投票(popular vote)」ではロムニー氏が、「選挙人投票(electoral vote)」ではオバマ大統領が勝つという、2000年大統領選挙のときと似たようなねじれ現象(注:2000年は、ゴア元副大統領が一般投票で過半数を取ったものの、選挙人投票はブッシュ前大統領が制した)が起こる可能性があるとも言われていたが、蓋をあけてみると、選挙人数はオバマ303対ロムニー203、と100人の差をつけての勝利、ロムニーが勝つかもしれないといわれていた一般投票も、2.5%という僅差ではあるが、オバマ大統領が制した

 既に2期目に向けて走り出したオバマ政権だが、今回の再選は、米国の今後4年間の方向性にどのような意味を持っているのだろうか

■国内課題が最優先

 2期目のオバマ政権の最優先課題は何だろうか再選を決めた後、7日未明に行われたオバマ大統領の勝利演説が何らかの示唆を与えてくれるとするならば、オバマ政権2期目の焦点は国内問題になる可能性が高い勝利演説の中でオバマ大統領が触れた問題――雇用、財政赤字削減、移民制度改革、税制改革――は全て国内向けアジェンダだ

 無理もない大統領選期間中を通じて、数ある政策問題の中で、有権者が唯一、ロムニー候補にオバマ大統領よりも高い評価を下していたのは「経済政策」だった改善されてきたとは言え、失業率はまだ8%スレスレという高いところで推移を続けている(投票直前に発表された雇用統計によると10月末時点での失業率は7.8%である)新規雇用の面では、堅調な伸びが続いており、10月も17万人が新たに就業したというデータがある数字だけ見れば景気は緩やかな回復基調に入ったといえるのだが、一般の市民がはっきりと「生活が少し楽になった」と実感できるような状況ではない

 加えて、国家財政赤字をいかに解消するかという問題が喫緊の課題として重くのしかかっている昨年8月にオバマ政権と議会が達した当面の妥協の産物である「予算制限法(Budget Control Act)」の期限は今年の12月末で切れるホワイトハウスと米議会の財政再建策を巡る交渉が年末までに妥結する可能性を悲観した株式市場が値下がりする反応をしていることから見ても、楽観視ができない状況であることが分かるだろう国防産業では既にレイオフに向けた準備も始まっており、今月中旬までに交渉が妥結する可能性が見えない場合、「肩たたき」が多くの国防産業で始まるという

 万が一、年末までに、財政再建策を巡る議会との折衝で何らかの合意に達することができなければ、米国経済に与える影響は甚大なものとなり、景気は再び後退してしまうそのようなことがあれば、オバマ政権は2期目発足直後から、実質的に「レームダック」化することになるつまり、米国経済はまだまだ厳しい状況に置かれているのだこのような状況の下では、来年1月から少なくとも2014年の中間選挙までの間は、オバマ政権の最大の関心は「米国経済の回復」であり、そのために必要な諸政策に、持てる政治的力の大部分を費やすことになると見るのが合理的だろう

■無視できない外交は「中国」と「中東」

 とはいえ、外交政策を全く無視できるわけではない勝利演説でオバマ大統領は「中東の石油輸入依存からの脱却」に触れたさらに、選挙期間を通じて、為替レート操作国及び米国の雇用の流出先としての中国に対する政策、特に対中通商・経済政策が何度となく議論の対象になってきているこのことから判断するに「中東政策」と「対中政策」が2期目の対外政策の重要課題になる可能性は極めて高いといえるだろう

 中東政策については、引き続き米軍撤退が続くイラク、アフガニスタン両国の安定をいかに維持するかをはじめ、収束を見せる気配のないシリア内戦、対イラン政策など、オバマ政権が1期目に頭を悩ませた問題がそのまま残っている

 加えて、リビア・ベンガジの米国総領事館襲撃事件を契機にイスラム教過激派集団による対米テロへの懸念が改めて浮上したとりわけ、ベンガジの総領事館襲撃事件については、本件に関する情報をCIAが適切に政権内で共有していなかったのではないか、特に、ホワイトハウスまで情報がきちんと上がっていなかったのではないかという疑問が呈されており、内政にも影を落としている大統領選終了直後の11月7日に、突如辞任を表明したデービッド・ペトレイアスCIA長官(元米中央軍司令官)の去就についても、「不倫」を理由にした辞任ではあるものの、ベンガジの総領事襲撃事件に関連する情報の取り扱いを誤ったのではないかという批判が政権内で強まる中で「更迭される前に自ら辞めたのでは」という捉え方もあるほどだ

 オバマ政権は昨年来、イラク及びアフガニスタンでの米軍による大規模な作戦が終了した後の安全保障政策に関して「アジア太平洋地域重視」路線を打ち出してきているが、中東でこのように不安定材料が多く残り、加えて前述のシリア、イラン、さらに長年の懸案であるイスラエル・パレスチナ間の和平問題も引き続き存在する中、米国は中東への関与を引き続き継続することになるという見方が支配的だ

■すぐに強硬姿勢に転じられないほど複雑な米中関係

 中東への関与を続けざるを得ないオバマ政権にとって、対中政策は、今後のアジア太平洋政策を考える上で、非常に悩ましい問題となる2001年9月11日のテロ事件以降の米国の対アジア太平洋外交政策については「(特に東南アジア地域に対して)テロの文脈以外での関心が薄い」「中東に気を取られて、殆ど意味のある関与をしてきていない」という批判も多い

 また、同時期に中国が上り調子の経済力を背景に全世界で「微笑外交」を展開、一方で1999年以降着実に伸びている軍事費を用いて人民解放軍の急速な近代化を推し進めた結果、アメリカのプレゼンスが低下した空白に中国が入り込んできた、という指摘も多い経済・金融面でも、対米貿易の最大黒字国であることや、人民元の為替レートが操作によって故意にドル高を維持しているという指摘もかなり前から燻っている

 特に、安全保障の分野で人民解放軍がサイバーセキュリティなどの「非正規戦」への投資を強化しているという事実や、最近の中国による南シナ海、東シナ海での中国の動き、第18回共産党大会での「海洋権益を断固守る」という胡錦濤主席の演説などは、中国の対外政策の今後への懸念を惹起させるには十分だ今年1月の「国防戦略指針」を含め、昨年秋から今年にかけてオバマ政権が意識的に「アジア太平洋重視」のメッセージを発してきたのは、このような批判に応え、中国に対しても米国がこの地域に引き続き関心を持ち続けているという戦略的メッセージを送る意味もあったといえる

 ただ、中国に対する懸念は持っていても、すぐに強硬姿勢に転じることができるほど、米中関係は単純なものではなくなってしまっている米国の対中貿易赤字は諸外国との貿易の中で最大、米国債も中国政府保有分はかなりの額に上るウォルマートに代表される米国の量販店のサプライチェーンにも中国は完全に組み込まれている中国経済にとって対米輸出や米企業による中国内への投資が経済成長に不可欠であるのと同じように、米国経済にとっても、中国からの輸入や中国国内の労働力、原材料の提供は重要な一部を構成するものとなっているのだ

 だからと言って、中国がアジア太平洋地域の安全保障問題で傍若無人に振舞うのを容認するわけにもいかない東アジアでも、北朝鮮問題のほかにも台湾問題という、米国の内政も密接に絡む難しい問題も抱えているしかも、国連安保理常任理事国の一国である中国からの協力は、アジア以外の地域の問題を国連の場で協議する際にも非常に重要になるイラン情勢がその好例だろう米国の対中政策の難しさは、このような異なる力学を考慮して、いかに最適解を導き出すかにある

■日本を見る目「一度決まったことが覆らない政権を相手にしたい」

 このような状況で、2期目を迎えるオバマ政権は日本とはどのように向き合おうとするのだろうか確実にいえるのは、「せめて、既に政府間で決めたことは粛々と実行してほしい」と米国が希望しているということだ

 2009年に民主党政権が発足して以来の3年間は、「政治主導」の名の下で、日米政府間での決定事項が事実上反古にされたり、日本政府の方針として一度は決定しかかったものが土壇場でひっくり返ることが続いてきた普天間飛行場移設問題や武器輸出三原則見直しを巡る民主党政権内での迷走はその一例に過ぎない環太平洋連携協定(TPP)も、野田総理が昨年11月に「加盟を見据えて交渉に参加したい」という意思表明をしたにも拘わらず、日本政府として交渉参加に向けた具体的な道筋は描けないままだ「民主党政権でも自民党政権でもいい一度決まったことが覆らない政権を相手にしたい」というのが米政府関係者の切実な思いだろう

 また、尖閣諸島問題を巡って日中関係が緊張を続ける中「日本は長期的に中国とどのような関係を築いていきたいと思っているのかが見えてこない」という声もよく聞かれる「尖閣諸島に対する武力攻撃は安保条約の5条事態(日本防衛)に相当する」という立場を取っている米国にとって、中国が「5警」として知られる、人民解放海軍ではない海警、魚政などの諸機関を用いて強硬な手段に出てきたときに日本がどのように対応するのかは、重要な問題だからだ
 「IT・ネット温故知新」では、歴史を紐解くことでIT・ネットの未来を見通すコラムを週1ペースで連載していく第2回のタイトルは「神様だったはずのOEM」ウィンドウズパソコンを製造するヒューレット・パッカード(HP)、レノボ、東芝などのメーカー(マイクロソフト社内では「OEM」と呼ばれている)についての話だ

【詳細画像または表】

 言うまでもなく、マイクロソフトのプログラマーが書き上げたソフトが意味を持つのは、ハードがあるからだ「ソフトなければただのハコ」という言葉があるが、逆もまた真なり「ハコがなければただのプログラム」なのだそのためマイクロソフトにとってOEMは文字どおり「神様」だった(ここで言う神様とは、三波春夫の名セリフ「お客様は神様でございます」の神様)

 しかし現在、神様はお荷物扱いされているお膝元の米国ではそれが営業政策に顕在化しているマイクロソフトはアップルストアに対抗するため米国内で直営店「マイクロソフトストア」を運営しているが、ここで大人気なのが、「マイクロソフト・シグネチャー」(マイクロソフトお墨付き)というサービスだこれはOEMが独自の工夫で入れたソフトを除去するサービスベルビュー店の店長はこのサービスについて次のように説明してくれた

 「OEMは多くのソフトをプリインストールして販売していますこうしたジャンクソフトがパソコンの不具合につながるマイクロソフトストアではジャンクソフトを取り除いて販売しています有料(1台100ドル)で持ち込みパソコンにも対応しており、アップルのマックも受け付けています」

 なんと、「ジャンク」とはっきり言い切ったOEMが独自開発して挿入しているソフトといえば、パソコンの使い方を指導するチュートリアル、マルチメディア再生ソフト、バッテリー管理ソフト、音声認識ソフトなどが代表的それ以外に、他のソフトウエアメーカーからインセンティブをもらって搭載するアプリケーションソフト、ユーティリティソフト(ウイルス対策ソフト)などがあるこうしたジャンクが悪さをして、マイクロソフトの目指すユーザー体験を阻害しているため、除去してしまうというのだ

■ 禁断の果実「アップル」で世界が変わった

 各パソコンメーカーが独自の工夫をすることを許しつつ、譲れない互換性部分をキッチリ維持するのがマイクロソフトマジックだったまた、不具合が起きても、目くじらを立てず、「ウィンドウズだから仕方がないな〜」と笑って許すのがユーザーの作法だった
 さらに、個別の政策問題を超えて「与党が民主党主導でも自民党主導でもいい安定した政権ができればいい」というのが、米政府で日米関係に関与している人達の共通の思いであるようだたとえば、外務・防衛当局の間では1997年に一度見直しが行われている「日米防衛協力の指針」を再度見直す方向で、事前協議が始まったが、「協議に一定の進展があれば、早く2プラス2を開いて、それを公の同盟としての文書に残したいしかし、短期政権が続く今の状況では、いつ開催するのかを判断するのが非常に難しい」という雰囲気が強い

 日本では、野田総理が「TPP解散」をするかどうかがささやかれている石原慎太郎元都知事をはじめとする、非自民、非民主の「第三の勢力」を巡る動きも目まぐるしいこの一連の動きの結果、米国が期待するような「安定した政権」が来年、日本に生まれる可能性はどれくらいあるだろうか

■国内課題が最優先

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