前々回の本欄で、「衰退か?  盛り返すか?  頭脳の格闘技

田中寅彦九段との対談からわかったこと ***

 前々回の本欄で、「衰退か?  盛り返すか?  頭脳の格闘技『将棋』をビジネスとして考える」と題して、主として日本将棋連盟とプロ棋士が関わるビジネスの側面について論じてみたが、筆者としても意外なほど多くの反響を貰った

 朝日新聞(11月6日夕刊)で取り上げて貰ったし、何よりも11月7日に、日本将棋連盟の田中寅彦常務理事(九段)とこの問題について対談し、ニコニコ生放送で中継されるという機会を得ることができたまた、田中九段以外にも、何人かとプロ棋士のお話を聞くことができたこの場を借りて、田中九段をはじめ、お話を伺うことができた関係諸氏に大いに感謝したい

 筆者は、将棋連盟の詳しい経営内容やプロ棋士の人間関係を知るような「将棋界のインサイダー」ではない将棋ビジネスの将来を語るには、まだまだ分からないことが多いだが、せっかくこうした機会を得たので、特に、ニコニコ生放送での田中九段との対談後に考えたことについて、フォローしておきたい

 プロの将棋の世界では、対局終了後、両対局者によって「感想戦」と呼ばれる検討が行われることが一般的だ本稿は、前々回の拙稿と田中九段との対談における「局後の感想戦」に相当するものだ

 田中九段や関係者の話をお聞きして、「やはりそうだったのか」と確認したことと、「これは認識が違っていた」と思ったことが、それぞれ複数あった簡単にまとめると以下の通りだ

 まず、以下の3点は、概ね事前に思っていた通りだった

?日本将棋連盟の目下の主たる収入源は、新聞をスポンサーとする棋戦契約料であるが、これは少なくとも伸びが止まっており、今後の推移は楽観を許さない

?コンピューターの将棋ソフトが強くなっており、プロ棋士が勝てない状況が到来することが「ほぼ時間の問題」(あるいは「単なる手続きの問題」)であるらしい

?将棋連盟の将棋ビジネスは棋士たち自身によって行われているが、硬直的で、ビジネス上不自由な部分が多い



大きくて設備のよい「新将棋会館」は建てられないのか ***

 逆に以下の2点は、共にビジネスとしての将棋を論ずる上で重要な点なのだが、筆者にとって意外だった

?将棋連盟は「公益社団法人」であるが故の経営上の制約が非常に大きい(たとえば、田中九段によれば、将棋連盟は公益社団法人なので、借り入れを行って投資することができないという)

?将棋連盟は、個々の棋士が将棋に関わるビジネスを行うことに対しては、概ね寛容である(田中九段が特に寛容なのかもしれないが)

 これらを前提条件として、いくつかの問題について考えてみたい

 まず、将棋の総本山である東京・千駄ヶ谷の将棋会館のキャパシティだ筆者は同会館が、将棋の普及教育のための施設としても、将棋を深く楽しむファンを対象にビジネスを深掘りする(要は、たくさんお金を払って貰えるサービスを提供する)施設としても、何とも小さすぎると思っているこれは、子供を連盟の子供将棋教室に連れて行くたびに感じることだ

 筆者は、この問題を解決するには、将棋会館を担保にお金を借りて、千駄ヶ谷と連絡のよい総武線沿線にでも、規模が大きくて設備の優れた「新将棋会館」を建てるべきではないかと、「普通のビジネス」のように考えていた

 しかし、田中九段によると、そのような借り入れを行った投資は、公益社団法人としては難しいのだという

 大きな「新将棋会館」を建てるには、将棋連盟が稼ぎを貯めて現金で建てるか、誰かに寄付して貰うか、あるいは、公益社団法人の会員である棋士自身がお金を出して施設を建て、後からメリットを回収するといった、いずれもすぐには実現しそうにない方法を講じなくてはならないようだ

 いずれかのスポンサーから、いったん寄付の形で「新将棋会館」を受け取り、これに対して何らかのメリットを返していくような、実質的なファイナンススキームが可能にならないか、などと何とか方法を考えてみたいところだただし、公益社団法人としてどこまで可能なのかが、筆者には分かりかねる

 できることなら、アップルないしはグーグルくらいのグローバルなインテリジェント企業をスポンサーにつけて、類い希な「頭脳の格闘技」を普及すると共に、スポンサー企業の宣伝に貢献することはできないだろうか



コンピューターを敵視ばかりせず、有効に活用すれば?  ***

 ともあれ、羽生善治三冠をはじめとするスター棋士が円熟期を迎えている現在の将棋ビジネス(同時に普及)にとって、好機をみすみす逃すのは何とももったいない
GEPR編集部
石井孝明 アゴラ研究所フェロー ジャーナリスト
(GEPR版)

http://livedoor.blogimg.jp/ikedanobuo/imgs/e/c/ec71cacb.jpg
(日本原燃・青森県六ヶ所村再処理工場 Wikipediaより)

GEPRとアゴラでは、核燃料サイクル問題について有識者の見解を紹介したそして「日本の核武装の阻止という意図が核燃料サイクル政策に織り込まれている」という新しい視点からの議論を示したこれをめぐり、読者からのメールでの反響、また寄稿者の金子熊夫氏の運営するエネルギー戦略研究会(EEE会議)のメンバーからの意見があったそれらを紹介して、読者の理解の参考にしたいいずれの寄稿でもツイッターでは50ー200のコメントがついたまたメールや文章では10通ほどの意見があり、また筆者石井に口頭で伝えた人もいた

原子力は米ロ英仏中の第二次世界大戦の戦勝5カ国では軍事利用と一体になって発展してきた一方で日本では民生利用のみで、軍事的な視点からの議論があまり行われなかった原発を抜本的に見なおす中で、その「秘められた論点」への思索が必要になっている

意見を整理すると「日本にあるプルトニウムは核武装に使えるのか」「日本は核兵器を保有するべきか」「日本は核兵器を持てるのか」の3つの論点があった

主な寄稿は以下の通りGEPRは今後も多くの読者からの意見を募りたい

◯元外交官、外務省原子力課長(初代)金子熊夫氏
「核燃料サイクルは安全保障の観点から止められないー民主党政権の原子力政策の死角」(GEPR版)

◯アゴラ研究所池田信夫所長
「核燃料サイクルは必要か」(アゴラ版)
「核武装というタブー - 『原発と原爆』」(アゴラ版)

◯アゴラ研究所フェロー石井孝明「外交カード「日本の核武装の可能性」は捨てるべきではないー原発政策の語られない論点「核兵器転用の阻止」を考える」(アゴラ版)

◯また核武装という論点には触れていないがではないが、核燃料サイクルを概観するものとして京都大学山名元教授は以下の2コラムを寄稿した

「核燃料サイクルと原子力政策(上)― 現実解は再処理の維持による核物質の増加抑制」(GEPR版)
「核燃料サイクルと原子力政策(下)―重要国日本の脱落は国際混乱をもたらす
(GEPR版)

1・日本のプルトニウムは核兵器になるのか

使用済核燃料から核兵器製造は困難

上記の議論で「日本はすでに約45トンのプルトニウムを持つ」という指摘が繰り返された意見では「使用済核燃料のプルトニウムは兵器用に転用できないことを強調するべきだ」という指摘があった

核兵器には、90%以上に濃縮したプルトニウム239が原料として必要だ使用済核燃料ではそれ以外の核種のプルトニウムが混じり、そこから核兵器をつくることは難しいというのが専門家の共通した意見だ実際に使用済核燃料から核兵器を作った例はない極秘裏に核開発をした北朝鮮、疑惑のささやかれるイランは、原子力発電でできたプルトニウムを使わずに、高濃縮ウランを原料にした製造方法を選んだとされるウラン式は製造がプルトニウム式よりやや簡単だが、大型になるとされるだから「日本は保有するプルトニウムでの核兵器の製造は困難」(投稿者A氏・エネルギー関係者)という意見があった

 将棋400年の歴史も大切だし、公益社団法人の意義も尊重しなければならないし、田中九段が正しくもおっしゃるように、新聞社に対する恩義も忘れてはならないだろうが、将棋というゲーム・コンテンツを「今」普及拡大することが最善のタイミングなのだろうし、「今」の素晴らしい棋士たちがもっと大きな経済的報酬を得て欲しいそして、これらは、将来の将棋の発展のためにも必要なことだ努力で変えられるのは、過去ではなく、今の連続として進行する将来だこの場を借りて、田中九段をはじめ、お話を伺うことができた関係諸氏に大いに感謝したいシャネル 財布この場を借りて、田中九段をはじめ、お話を伺うことができた関係諸氏に大いに感謝したいルイヴィトン 財布この場を借りて、田中九段をはじめ、お話を伺うことができた関係諸氏に大いに感謝したいグッチ バッグ